特別対談 「地方創生・産学連携の視点から国立大学に期待すること」

「地方創生・産学連携の視点から国立大学に期待すること」をテーマに、日産自動車の志賀俊之・取締役副会長と山本文雄学長が意見を交換しました。秋田大学特別対談企画の2回目となります。産業界でのキャリア、中央教育審議会委員としての視点。産業界を代表するリーダーから、多様な切り口のメッセージです。

産学官が一体となり、秋田県の特徴を生かした産業育成することが「地方創生」の鍵


志 賀 俊 之 (Toshiyuki Siga)
1953年和歌山県生まれ。1976年大阪府立大学経済学部卒業。 1976年日産自動車株式会社に入社。1991年同社アジア大洋州事業本部アジア 大洋州営業部ジャカルタ事務所長、1999年同社企画室長・アライアンス推進 室長を経て、2005年同社代表取締役 最高執行責任者に就任。 現在、同社取締役 副会長、株式会社産業革新機構代表取締役会長(CEO) 及び第8期中央教育審議会委員を務める。

山本:私たちの若い頃は、何をやりたくてというよりは学んでいるうちに自分はこちらの方が向いているのではないか、または親から「これをやりなさい」と言われたら、もうそちらの方に進まなければならないというところがありました。そういう意味では、今の若者は私たちの世代よりも自分が何に向いているのかを考え、自分の能力をある程度自身で評価して色々と行動しているようにも感じます。

志賀:現状の日本は「就職」ではなくて『就社』だと思います。職には専門性が必要となりますが、つまり自分は何をやりたいか、何になりたいか、その職のプロフェッショナルにならなければならないという、例えばプロのスポーツ選手と同じだと思います。日本の場合、この発想がすごく弱いですね。
現在盛んに高大接続と言われ、大学側はアドミッションポリシーやカリキュラムポリシーなどをしっかりと示していますが、私が高大接続で一番大事と思うのは、高校生が大学を選ぶ時にアドミッションポリシーなどに合うような選び方ではなく、高校生の時から自分は将来何になりたいから、こういうカリキュラムポリシーを持っている大学に行きたいということだと思います。私はさらに『大学-社会接続』と言っております。大学での人材育成が、社会におけるプロフェッショナル型志向に繋がるものだと思っております。
 先ほども申し上げましたように、日本の場合あくまでも『就社』であって、プロフェッショナルになるということではないのです。入社し、たまたま配属された部署で何となく仕事をするものですから、例えば“商学部出身でもない人が経理部に配属され、簿記などの基本も知らずに仕事をする。経験や勉強を重ねればプロフェッショナルになれるかもしれないが、詳しくなってきた頃には人事異動で別の部署に配属となる”これでは職のプロフェショナルにはなれません。仮に、会社の経営に将来携わりたいと考えた場合、大学では簿記や財務などもしっかり勉強でき、経営学についても勉強できる大学に入るという意識が必要だと思います。
 しつこいようですが、日本はメンバーシップ型と言いますか、会社に入ること、会社の一員になることが就職になってしまっていますので、これはやはり『就社』ですよね。例えば、経理や財務、M&Aなど、その道のプロになるだという意識で会社に入社することがプロフェッショナル型だと思います。

志賀:私は、最初に就職するのは大手企業ではなく中小企業の方が良いと思います。大手企業ですと、人員も多いため、その分担当も多いことから、同じ業務でもある程度分担されていることがありますが、中小企業ですと人員が少ないため一人にかかる業務も多く何でもやらされます。そこで勉強し、ステップアップしていくことも一つではないかと思います。
 私が知っている海外の大手企業の経営者は中小企業出身者が多く、そこで専門性を磨きステップアップしてきているのですね。日本もプロフェッショナル型への転換が必要で、そのためには大学でどのような人材を育てていくかという方針が非常に大事になってくると思います。

学生時代に「基礎」「専門」のどちらかを選択し、徹底的に鍛えていくことが大事


山 本 文 雄 (Fumio Yamamoto)
1948年福岡県生まれ。1975年鳥取大学医学部卒業。専門は心臓血管外科。
1981年鳥取大学医学部附属病院助手、1991年国立循環器病センター第三循環器外科医長。
1998年秋田大学医学部教授、2014年同大理事(研究・国際・産学連携・情報担当)・副学長を経て、2016年に就任。

山本:秋田大学には農学系の学部はありませんが、理工学部がありますので、例えば理工系教員の知識を応用して農業の近代化に取り組んでいくことは非常に良いことだと思います。

山本:10年後、20年後には、今想像していない職業が増えてくることが予想されるため、そのことを考慮しながら学生教育にあたるよう文部科学省も最近よく求めています。私たちにしてみれば、将来どんな仕事があるのかということも分かりませんし想像もつきませんが、その中で学生たちを教育するというのは非常に抽象的で分からない面があります。このことについて、ご提言をお願いできますでしょうか。

志賀:私は二つあると思っております。まず一つ目です。いわゆる人工知能によって今の仕事の49%は10年後、20年後にはなくなると言われていて、例えば、会社の受付や営業の仕事などは、ほとんど人工知能やロボットで対応できる可能性があります。多くの仕事はそれらに代わり、一方で学校の先生や医師など、要するに、人との関わりの中で答えを出していかなければならない仕事はなくならないと言われています。専門性を身につけていく、ある程度職業的な技能とプロフェッショナルなところをしっかりと学んでおくことが生き残る一つだと思います。
 二つ目は、教養をしっかり積むことだと思います。教養を身につけ基礎がしっかりしていれば、たとえ専門分野でなくともどんな分野においても応用が利きます。
 今後は、徹底的に専門性を高めることか、専門職ではないが教養があるため応用がきくことかの2種類になってくるのではないでしょうか。専門性もなければ教養もないまま学生生活を過ごすことは非常に危ないことだと思います。

志賀:国際教養大学(秋田市)のように4年間徹底的に教養基礎教育を鍛えることに特化している大学もありますが、秋田大学には国際資源学部という資源系のスペシャリストを育成する学部があります。専門性を徹底的に鍛え、技術者として世に送り出すことも非常に大事なことだと思います。
 日産自動車で活躍してきた名だたる研究者は、実は大学時代の研究テーマとは違うことをしている人が多いのです。おそらく専門外でも、どこをねらいとして研究しているかという点をつかんでいたからだと思います。研究者魂というものが大学時代に培われているのですね。
 日産自動車では、ある時期から電気自動車の開発を行ってきましたが、その内容は電気やバッテリーなどの応用化学の分野となるわけです。研究者の多くは機械工学部の出身でしたので、彼らにとっては、メカニカルな分野とは専門外の研究を行うこととなったのです。ただ彼らは、数学や物理などの基礎をしっかり身に付けていたこともあり、応用ができたのです。大学で、理系の教養として研究するにあたってその真理を追及することができれば、非常に万能な良い研究者になれるように思います。

企業が求めるのは「多様性があり情熱を持って自分の考えを表現できる人材」

山本:理系の場合、数学や物理などの基礎理論をしっかり身に付ければ将来につながるということですね。志賀さんのお話を伺い、基礎的なことをしっかりやり専門的なこともしっかり行うことが大切だということがよく分かりました。仮に秋田大学でそのような教育を受け、例えば日産自動車のような大手企業に就職したいという学生がいた時、採用する時にはどのようなところに注目されますか。

志賀:新入社員であれば、意欲、情熱、向上心などがどのくらいあるかということに着目しますね。日産自動車の場合、外国人留学生を2割弱採用していますが、「私はこの会社に入ってビッグになるぞ」という彼らの向上心やハングリー精神のような野心は日本人学生とは全く違います。日本人学生は総じて大人しく、特に野心を持って入社してくるという人は少ないです。日産自動車の売上海外比率は9割弱となりますので、社内の全てのフロアには当たり前のように外国人がいますし、仕事の相手も外国人です。日本では「謙譲の美徳」「沈黙は美」などと言われることがあり、会議で静かにしていても「あいつは無口だがしっかりと考えを持っているのでは」などと思われることもあるかもしれませんが、それは日本でしか通用しません。外国では言った者勝ちとなりますので、日本人はそこで気合負けしてしまいます。
 日産自動車でもグローバルマネージメントとして、日本人のみならずアメリカ人、中国人、インド人など国籍関係なく優秀な人材を採用し、その優秀な人材が能力を発揮し、よりチャレンジできる環境を整えていますので、日本人だからといって特別扱いは全くしていません。そのことは、採用選考のときにもしっかりと説明し、「日本人学生のあなたたちが優秀な外国人留学生たちと互角に競い合っていく覚悟はありますか」ということも伝えています。これは英語力だけの問題ではありません。とにかく自分の考え、やりたいことを下手な英語でも良いので、情熱を持ってしっかりと表現できるかが重要なのです。
 一方で、日本には多様な世界の中で自分をしっかりと主張しながら意見の異なる相手を認める、という文化があります。自分の意見だけを言い、意見の異なる人間の言うことはきかないということでは全く仕事になりません。多様性とは自分の意見をしっかり持ち、かつ相手の考え方や異なった意見なども受け入れ、対等に議論し一つの答えを出すことだと思いますので、そのような視点でも人材を見極めています。

明確な目的を持ち、それを実現するための行動を

山本:文部科学省のホームページに「高校生の心と体の健康に関する調査(2011年3月)出典:財団法人一ツ橋文芸教育振興協会、財団法人日本青少年研究所」の集計結果があるのですが、日本をはじめアメリカ、韓国、中国の高校生に「自分は優秀と思うか」という質問をしたところ、アメリカでは6割近くの高校生が「自分は優秀だ」と回答したそうです。一方、日本人で同様の回答をしたのは2割弱で、非常に大きな違いがあります。私も日頃から学生たちを見ていると、やはりそのように感じる部分もあります。また、秋田県の学生たちの傾向と言えるかもしれませんが、公務員になりたいという、俗に言う安定志向型の学生が多いようにも思えます。しかも理系でもそのような傾向があります。

志賀:私はすごく不思議に思いますが、子供の頃に何をしたいという問いに対して、例えばプロ野球やサッカーの選手になりたいとか、スポーツの世界で夢を持つことはあるのですが、学業面では、この勉強をして何かになりたいということは割となく、何となく高校から大学へ進学し、就きたい職業も別になく、やりたいこともないけれど、周りの流れに乗って就職活動をするという傾向が見受けられます。そして、地元に就職するのであれば安定した公務員という道になるのだろうと思いますが、私が委員を務めている文部科学省の中央教育審議会でもよくお話していることがあります。
 従来の日本教育は子供の頃から勉強し一生懸命正解を覚え、試験で良い点数を取り、偏差値の高い学校に行き、できる限り安定した良い仕事をするために大きな会社に入りたいという流れがあったと思いますが、現在は初等教育から自分自身で考えて判断し、それを表現するという思考判断表現に学習指導も変わりつつあります。アクティブラーニングを行い、つまり正解を覚えることではなく自分で何かをやって学んでいくという教育。そうすることによって学ぶことに興味が出て、何かをやりたいということが必ず出てきます。アクティブラーニングで面白い実験などを体験すれば、研究者になりたいとか、こんなことができる会社に勤めたい、などの考えも出てくると思います。

志賀:初等教育の時から、将来何をやりたいのかという考えを持ってもらいたいと思っています。それはどんなことでも良く、例えば、会社を起業したい、家業を継ぎたいなど。もし、家業を継ぎたいとなれば、そのためにはこんな勉強をしておかなければまずいなという風に、“これをやりたいからこれを学びたい”、“これを学びたいからこの大学へ進学したい”というように変えていく必要があるのではないかと考えています。せっかく理系の学部に入学したのに公務員になりたいという回答は、入学する時点で何をやりたいかが決まっていないのだと思います。あるいは、高校時代に日本史や世界史などの文系より数学などの方が得意だったから何となく理系の道に進んだということも考えられます。逆に、私は将来これをやるために、そのために秋田大学のこの学部を選びました、と学生から言われた方が大学の先生方も教えがいがあると思います。
 外国では、子供のやりたいことを親が全面的に応援しています。大学へ入学し卒業する間際まで、何をやりたいのかが決まってないのは不思議な気がします。

就職がゴールではなく、その道のプロへ ~メンバーシップ型からプロフェッショナル型への転換~

山本:私たちの若い頃は、何をやりたくてというよりは学んでいるうちに自分はこちらの方が向いているのではないか、または親から「これをやりなさい」と言われたら、もうそちらの方に進まなければならないというところがありました。そういう意味では、今の若者は私たちの世代よりも自分が何に向いているのかを考え、自分の能力をある程度自身で評価して色々と行動しているようにも感じます。

志賀:現状の日本は「就職」ではなくて『就社』だと思います。職には専門性が必要となりますが、つまり自分は何をやりたいか、何になりたいか、その職のプロフェッショナルにならなければならないという、例えばプロのスポーツ選手と同じだと思います。日本の場合、この発想がすごく弱いですね。
 現在盛んに高大接続と言われ、大学側はアドミッションポリシーやカリキュラムポリシーなどをしっかりと示していますが、私が高大接続で一番大事と思うのは、高校生が大学を選ぶ時にアドミッションポリシーなどに合うような選び方ではなく、高校生の時から自分は将来何になりたいから、こういうカリキュラムポリシーを持っている大学に行きたいということだと思います。私はさらに『大学-社会接続』と言っております。大学での人材育成が、社会におけるプロフェッショナル型志向に繋がるものだと思っております。
 先ほども申し上げましたように、日本の場合あくまでも『就社』であって、プロフェッショナルになるということではないのです。入社し、たまたま配属された部署で何となく仕事をするものですから、例えば“商学部出身でもない人が経理部に配属され、簿記などの基本も知らずに仕事をする。経験や勉強を重ねればプロフェッショナルになれるかもしれないが、詳しくなってきた頃には人事異動で別の部署に配属となる”これでは職のプロフェショナルにはなれません。仮に、会社の経営に将来携わりたいと考えた場合、大学では簿記や財務などもしっかり勉強でき、経営学についても勉強できる大学に入るという意識が必要だと思います。
 しつこいようですが、日本はメンバーシップ型と言いますか、会社に入ること、会社の一員になることが就職になってしまっていますので、これはやはり『就社』ですよね。例えば、経理や財務、M&Aなど、その道のプロになるだという意識で会社に入社することがプロフェッショナル型だと思います。

志賀:私は、最初に就職するのは大手企業ではなく中小企業の方が良いと思います。大手企業ですと、人員も多いため、その分担当も多いことから、同じ業務でもある程度分担されていることがありますが、中小企業ですと人員が少ないため一人にかかる業務も多く何でもやらされます。そこで勉強し、ステップアップしていくことも一つではないかと思います。
 私が知っている海外の大手企業の経営者は中小企業出身者が多く、そこで専門性を磨きステップアップしてきているのですね。日本もプロフェッショナル型への転換が必要で、そのためには大学でどのような人材を育てていくかという方針が非常に大事になってくると思います。

大学変革のポイントは「産学連携の強化」と「大学に対する寄附文化の定着」

山本:志賀さんは中央教育審議会の委員をされておられます。国立大学が独法化してから12年、年々、運営費交付金の減額が続き、大学での研究も制限されてくる状況ですが、我が秋田大学は、どのように変革を遂げていくべきとお考えでしょうか?

志賀:日本の経済状況が厳しくなっている中でも約1億2、700万もの人口を抱えています。そうするとやはり日本は過去も現在も人材が最大の武器であり財産でもあります。世界各国を見ても教育に投資している国はやはり成長していますね。国が教育に投資をしなくなると、人が育たなくなります。そういう意味で言うと、大学は高等教育機関として最先端の教育研究を行い、技術革新を起こしていくという意味では日本のベースとなっていきます。大学で基礎研究を行い、それらが応用研究され、企業側に移り製品やサービスなどに還元された例は非常に多いです。運営費交付金の減額が続けば、基礎研究よりも実用性、実効性の高い研究に力がそそがれることになると思います。そうなれば基礎研究がおろそかになり、研究開発、そして人材育成も進まない状況になりかねません。今後、運営費交付金が増えることは予想されませんので、大学側が変革を遂げていかなければならないということになるでしょう。
 それについては、私から3つの提案があります。
 1つは産学連携です。残念ながら日本は企業と大学との連携が非常に弱く、それに関する予算も決して多くありません。運営費交付金を獲得するために、大学側では科学研究費助成事業など国の補助金への申請・採択率を上げるよう努力したり、少額な予算で研究を行ったりと色々な面で工夫されているのが実態だと思いますが、これでは良い研究ができるとは思いません。
 一方、アメリカやドイツなどでは企業と大学との共同研究を日本よりも盛んに行っています。日本も産学連携をもっと盛んに行うべきだと思いますが、必ずしも連携がうまくいっていないのは、産業界と日本の大学の関わりが弱いことが挙げられます。共同研究の場合、成果が約束できないこともあるため、企業側は資金を出すことができないということが理由の一つです。
 海外の大学では、例えば1年間でこういう研究をやってくださいとオーダーした場合、その期間に間に合わせてしっかりと成果を出してくる。そうなると企業と大学との関わりも強くなってきます。仮に、大学側が産業界のために研究をしているわけではないと、あるいは、産業界に対して尻尾を振っているような状況であれば、日本のためにはなりませんし、お互いに歩み寄っていかなければならないと思います。少なくとも秋田県内にも輝く技術などを持っている企業がありますので、地元企業と秋田大学がもっと連携していけば、秋田県の経済のためにもなりますし、人材育成の面でもメリットがあると思います。

志賀:2つ目は、企業と大学とのマッチングについてです。大学での研究が意外と日の目を当たる前に消えてしまうケースが多いですが、そのような研究がある企業にとっては有益なものだったりとすることもあると思います。そういったものを大学が見極めて支援できる体制を整えていくことが必要です。そして、大学の教員自らが積極的に産業界へ売り込むような姿勢を見せていただき、マッチングしていかなければなりません。海外の民間企業では、企業と大学とをマッチングさせる事業を行っているところもあります。大学側ではどのような研究が行われ、企業側ではどのようなニーズがあるのかを調査し、企業と大学をマッチングさせているようです。

志賀:そして日本の場合、大学へ寄附をするという文化を定着させることだと思います。私は大阪府立大学の出身で大学には大変お世話になり、今でも感謝をしています。大阪府立大学は公立大学ですので、お礼も込めて、大阪府のふるさと納税制度を活用して寄附をしています(*大阪府では、大阪府立大学・大阪府立大学工業高等専門学校への支援のため、ふるさと納税制度を活用した寄附を受け付けている)。国立大学の場合、税制上などで難しい面があるのは分かりますが、国立大学における寄附文化を作っていくことが鍵だと思います。寄附が充実してくれば教育研究にさらに力を入れることができます。そして大学が優秀な人材を輩出することで社会に還元することができます。さらにその人たちがまた大学に寄附することで良い循環が生まれてくると思います。

山本:まさに寄附文化を定着させることは非常に大切なことだと思っています。平成26年度に秋田大学みらい創造基金を創設しておりまして、教育研究による社会への貢献という本学の使命を果たすための大きな支えにしていきたいと考えております。

大学が率先し社会課題の解決を、目利きを鍛えそして時代のニーズにあった研究の実施へ

山本:最後に、大学はどのような視点で教育研究を行っていくべきかを伺えればと思います。

志賀:日本に限らず海外も視野に入れ、大学が率先して社会課題を解決していくことが必要であると思います。例えば、日本だけでも少子化、環境、災害などの社会課題があります。自分の好きな研究しか行わない、研究のための研究ということではなくて、社会課題を解決する研究を行っていくことで、その結果として解決につながり、さらにはビジネスにも結びついてくると思います。
 そして産学連携の強化ですね。産業側がニーズとしているものを連携することは目先のこととしてあると思いますが、社会課題を産学連携によって解決していくことも必要だと思います。ビッグデータ、人工知能、IoTなどの第4次産業は、中小企業でも導入することができます。実際に若手起業家がベンチャーを立ち上げ成功している例もあります。大学でもこの第4次産業に関する研究を行っていると思いますが、目利きを鍛え、かつアンテナを張り巡らし、時代のニーズを読み取りながら社会課題の解決に寄与していただきたいと思います。


山本:大変有益なメッセージやご提言をいただきありがとうございました。学生には、新たな世界に挑戦する気概を持ち、世の中に貢献できる人材となってほしいと思います。また私どもも、地域にふさわしい「地(知)の拠点」としての大学形成に邁進していきたいと思っております。

※掲載内容は取材時点のものです。
(取材日:2016年9月28日)