過去に発生した地震を探る~秋田県沿岸部における津波堆積物調査【鎌滝孝信】(27.1.29)

 秋田県では,1983年5月26日に発生したマグニチュード7.7の地震(日本海中部地震)により大きな被害を受け,79人の方が津波で犠牲になりました。これ以外にも日本海東縁部では,1833年庄内沖地震,1940年積丹半島沖地震,1964年新潟地震および1993年北海道南西沖地震などマグニチュード7.5を超える地震が発生し,沿岸各地に津波による被害をもたらしてきました。しかしながらそれ以前に秋田県沿岸部に影響を与えた大規模な津波に関しては,その波源や規模などの詳細はよく分かっていません。

 ある地域で将来発生する可能性のある巨大地震を予測するためには,その規模の地震が過去にどれくらいの繰り返し間隔で発生していたかを知る必要があります。海溝型地震を例にすると,日本列島は四方を海に囲まれ,またプレート境界に面した場所に位置していることから,昔から数多くの津波による被害を受けてきました。これらの記録は古文書等の歴史記録に数多く残されていますが,それに残される巨大地震の歴史は長くても1,000~1,500年です。2011年東北地方太平洋沖地震のように500~1,000年に1回発生するような超巨大地震の繰り返し間隔を調べるためには,より長期間に渡る地震の履歴が必要となります。そこで,地震による津波が地層に残した痕跡を調べる手法,すなわち津波堆積物調査がおこなわれることになります。「津波堆積物」とは,巨大な津波によって削り取られた海底や海岸の一部が,別の場所に運ばれて再堆積したものを指します。沿岸の地層から「津波堆積物」を探し出し,その形成年代や分布を調べることによって過去にその場所を襲った巨大津波を知ることができ,条件の良い場所では過去数千年間の津波履歴を知ることができます。

 現在,我々はこのような研究を秋田県内の沿岸各地で進めており,平成25年11~12月に潟上市とにかほ市で,平成26年12月に潟上市,男鹿市および八峰町でボーリング調査を実施しました(写真1および2)。これらの調査で得られたボーリング試料から,過去に秋田県を襲った津波の記録も明らかになりつつあります。日本海側における過去の巨大地震・津波履歴に関する研究は,太平洋側のそれと比べるとまだまだ情報の蓄積が少ないと言わざるを得ません。今後,研究の対象地域を広げながら,日本海側における地震・津波防災に資する研究成果を発信していきたいと考えています。
(今回のコラムは,秋田大学広報誌「アプリ-レ47号」の教員紹介の欄に掲載された文章を加筆・修正したものです。)



<写真1>潟上市におけるボーリング作業の状況(2014年12月)



<写真2>八峰町峰浜地区におけるボーリング作業の状況(2014年12月)