過去に発生した地震を探る ~津波堆積物について【鎌滝 孝信】(24.6.29)

現在、秋田県では地震被害想定調査がおこなわれていますが、今回のコラムは過去に発生した津波の痕跡である津波堆積物について紹介します。
地震の予測とはいつ・どこで・どれくらいの大きさの地震が発生するかを地震が発生する前に予測し公表することですが、「いつ」を推定するためには、過去に発生した地震の繰り返し間隔を調べることが必要となります。海溝型地震を例にすると、日本列島は四方を海に囲まれ、またプレート境界に面した場所に位置していることから、古くから数多くの津波による被害を受けてきました。これらの記録は古文書等の歴史記録に数多く残されていますが、それに残される海溝型巨大地震の繰り返しは数回分です。正確な地震の繰り返し間隔を調べるためには、より長期間の地震の記録が必要となります。そこで、地震が地層に残した痕跡を調べる手法、すなわち津波堆積物調査がおこなわれることになります。この手法によって、条件の良い場所では過去千~数千年間の津波の履歴を知ることができます。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による巨大津波は、東北地方から関東地方に至る太平洋側の広い範囲に大きな被害をもたらしましたが、それと同じような地震津波が西暦869年に起こっていたことが歴史記録や津波堆積物を使った地質学的な調査・研究によって明らかにされ、さらにはそのような超巨大地震が繰り返し発生していたことが 東北大学や産業技術総合研究所の研究によってわかってきていました。すなわち2011年東北地方太平洋沖地震は、多少の違いはあれ、まさに予測されていた場所に予測されていた規模の地震・津波が発生した一例といえます。このように、津波堆積物調査が過去に発生した地震に関する情報を得るために有用であることが一般に認識されたため、現在では全国各地でそのような調査が広くおこなわれるようになってきました。津波堆積物は、過去に発生した海溝型巨大地震の歴史を明らかにし、我々に将来の地震に対する警笛を発してくれます。

地層中にみられる津波堆積物の例を写真1と2に示します。写真1は、1960年チリ地震の震源域周辺で調査をおこなった際のものですが、1960年の津波堆積物と1575年の地震津波で形成された津波堆積物がみられます(Cisternas et al.、 2005)。また写真2は、千葉県館山市にみられる約7、000年前に形成された津波堆積物です。(藤原ほか、2003)



引用文献
Cisternas, M., Atwater, B., Torrejon, F., Sawai, Y., Machuca, G., Lagos, M., Eipert, A., Youlton, C., Salgado, I., Kamataki, T., Shishikura, M., Rajendran, C.P., Malik, J.K., Rizal, Y., Husni, M. (2005) Predecessors of the giant 1960 Chile earthquake. Nature, 437, 404-407.

藤原 治・鎌滝孝信・田村 亨(2003)内湾における津波堆積物の粒度分布と津波波形との関連-房総半島南端の完新統の例-.第四紀研究、42、67-81.