プレートテクトニクス(その1)【野越三雄】(25.7.19)

「地球(その2)」ではグローバルな地球を理解するために、地球の「力学的性質」、「磁気的性質」、「熱的性質」等地球内部環境を構成する主たる物理的性質についてまとめて概観してきました。しかし、地球規模で起こる現象もそれぞれ地域的に起こる現象も同一の地球で起こっている現象に他ならず、統一的な理論で矛盾なく全現象が説明出来ることが究極の望みでしょう。
 1912年に提唱された大陸移動説に端を発した仮説理論が海洋拡大説を経て、さまざまな検証をクリアしてきたプレートテクトニクス(適当な訳文がないので全文を読んで理解して下さい)は現在最も有力な統一理論となった。ここではこれらの説の歴史的経過をふり返りながら順次簡単に述べることにします。

「大陸移動説」
20世紀に入って間もなく大陸は移動すると気が付き始めた人も出てきましたが、ドイツのウェゲナー(Wegener,A)は1912年大陸が移動する現象を包括的に実証しようとして大きな反響を世に与えました。それは一つに集まって巨大な大陸(パンゲア超大陸)をなしていたのが、約2億年前に分裂移動しはじめて今日の位置になったというもので、アフリカと南アメリカの向き合う海岸線の形、両地域にまたがる地層の対比やある種の生物化石の分布、氷河時代の氷河跡の分布が南極を中心とした円上に集合することなどが無理なく説明できることを示したのです。しかし、当時の学界は大陸を動かす原動力の存在が説明出来ていないとして否定的だったために、1940年頃までには廃れてしまいました。しかし、1950年頃に発達した古地磁気学が大陸移動説を復活させることになったのです。



「海洋底拡大説」
1950年代はエレクトロニクスの進展がめざましく、これに伴う海洋観測技術が進歩し、海底地形、海底地磁気異常、地殻熱流量、海底地震等々の観測データが飛躍的に蓄積された時代であり、これらのデータを統一的に説明しようとしたのが海洋底拡大説である。

図1 3種のプレート境界,発散境界,収束境界およびトランスフォーム断層の概念図

図1の左2つの図に示したように、海嶺においてはマントル内の高温の物質が上昇する発散(湧き出し)の場であり、それが移動し冷える過程で新しい海洋底をつくり、横に拡がっていきやがて到達する海溝においては冷却した海洋底が収束(沈み込み)する場とする概念がこの説の主要部であり、今まで不明だったその原動力はマントル対流を念頭においていることになります。
以下、上述した海洋底観測の主な結果とその説明について述べていこう。


i) 海底地形の観測結果が多く集まるに従い、その堆積層の厚さが予想に反して大変小さく、約46億年前の地球形成時からの時間を考慮すると、この堆積に要した時間は数億年と見られることから海洋底は非常に新しいと考えられる。この説明として海洋底の生成から消滅までの時間を考慮に入れれば理解されます。

ii) 大西洋中央海嶺、東太平洋海嶺等での海底地形は大山脈の連なりであった。そして、その断面から頂上部には図2のように深い谷(中軸谷)が存在し,ほとんど堆積物がなく新しい火成岩で構成されていた。
図2 大西洋中央海嶺の断面の1例

まさに、海嶺はマントルから次々と高温のマグマを湧き出す火口であり、頂上の深い谷はそこに相当しているものと考えられます。


iii) 「地球(2)」でもふれたように、海底の地殻熱流量は海洋域の平均値としては予想に反して大陸域のそれより大きい値を示すことが分かり、熱伝達の仕組みが大陸域とは違うことを示唆しました。これは海嶺からの海洋底の移動に伴うマントル対流による熱輸送で説明が可能である。さらに、海嶺の中央部では熱流量は非常に大きく、海溝部では小さいという観測事実もこの説の理論の中核を支持することになります。



図3 東太平洋地域での地磁気異常

iv) 海底における地磁気異常の観測結果はある種の興奮を研究者達に呼び起こしました。図3には海嶺周辺で観測された地磁気異常の縞模様で中心の海嶺軸(図中BC、DE)を対称軸にしてほぼ平行に地磁気異常の正負が並んだ様子が示されている。この奇怪な縞模様は何を意味するのだろうか。
1963年バイン(Vine)とマシューズ(Matthews)はすばらしい着想でこの縞模様の謎を解きました。「地球(2)」でふれたように古地磁気学による地球磁気逆転の歴史を、海嶺から溶岩が湧き出て冷却・固化する過程でその時の地球磁気を記録するという磁性体の物理的性質に結びつけた発想が、海底に海嶺を中心として対称的に縞模様ができることの見事な説明となったのです。このことは海洋底拡大説を確かにしたと同時に、具体的に海洋底の拡大速度が数cm/年のオーダーであることを示した意義は大きい。


図4 中央海嶺における地震の断層運動、トランスフォーム断層,
プレート断層の模式図(平面図)

v) 海洋底における多くの地震の震央が求められるようになり、その分布(後述)も明らかになってきた。特に、中央海嶺の中軸谷下で発生する地震は海嶺の中軸谷から両側から引っ張る張力によって起こる正断層(後述)である。
図4のように2つの海嶺軸A、Bに交わるように生ずる断裂帯では横ずれ断層(後述)の地震が多く、しかもそのずれの方向・向きが断裂帯を挟んで中軸谷のずれと逆になることが見出されて大きな問題となったが、このことも海嶺軸を対称にして海底が拡大していくとすれば矛盾なく解決できることになる。そして、海底が拡大する際に逆向きに移動する内側でも地震が発生することの意味と地震の震源が浅いことの意味も海洋底拡大説は見事に説明していることになる。この断裂帯のことをトランスフォーム断層(図1の右側の図はその概念図)と呼ぶ。その典型的な長大な断層の一例として、ロサンゼルスとサンフランシスコとを結ぶカリフォルニア海岸沿いの巨大な断層、サンアンドレアス断層が有名である。


vi) 岩石等の年代測定方法の精度が高くなるにつれて、海溝軸からの離れた場所の岩石等を収集し、その年代を推定することも可能になってきました。この結果からはやはり岩石の年代も海溝軸から遠くなるにつれて古くなっていることが実証され、海洋底拡大説はさらに確実なものとなったのです。


以上のように海洋底拡大説にプレートという概念を取り入れ、プレートとプレートの間で起こる相対運動が地震・磁気・熱などの物理地学的現象の原因であるとするのがプレートテクトニクスの根本です。
 次回はプレートテクトニクスの具体的な姿や近代的な知見もまじえて述べていきましょう。

参考
【図1】安藤雅孝・吉井敏尅 編「理科年表読本 地震」68ページ 平成5年 丸善株式会社
【図2・3・4】秋田大学鉱山学部通信教育講座地球科学コース教科書「地震」