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2015.7

試行錯誤のワーク・ライフ・バランス

北川 悦子
北川 悦子
秋田県農業試験場
原種生産部 部長

 結婚を契機に他県の公務員を退職し、秋田に戻ってきて専業主婦となった。育児をしながらでもまだ余力があると思い、一念発起して再就職にチャレンジし、34歳のとき秋田県職員になった。以来20年以上、公設試験研究機関の研究員として勤務している。
 農業試験場原種生産部には平成17年に配属され、今年で11年目になる。原種生産部は、稲、麦、大豆の原原種・原種(農家の方が使う種子の元種子)生産を担当する部署であるが、種子生産に特化した部を設置している農業試験場は全国的に珍しいようだ。そのせいか、県外の方に「げんしゅせいさんぶ」と伝えると、「秋田県」→「お酒」を連想するようで、「原酒生産部」と勘違いされることが少なからずある。
 残念ながら美味しい仕事ではない。種子を播かなければ収穫物は得られないので、種子は農業の根幹と言われる由縁であり、農業者の需要に応じた種子を毎年供給しなければならないので生産する側の責任は重い。田植え後の水田風景を目にすると一先ず安心する。
 これまで、仕事上で女性であることを意識することはほとんどなかったように思う。また、育児、介護でも弱音を吐きそうになった場面は数々あったものの、実家の両親、親戚、ご近所さん、友人総動員で乗り切ったつもりでいた。
 ところが、25歳になる娘が久々に帰省した折り、結婚しても続けられる職種は何かを話し合っていると、突然20年以上前のことを言い出した。
 「小さい頃に熱をだした時、車に布団ひいて寝かされてどこかに連れて行かれた。熱くて苦しかったし、知らない人が車の窓の隙間からのぞき込むので怖かった。私は今でも時々思い出すけど、お母さんのことだから覚えてないよね。」
 急場をしのぐため、発熱している幼児を車に乗せ、職場の駐車場に止めてから、用事が済むまで車内でじっとしているように言い聞かせた時のことを記憶していたのだ。無理がたたって完治に1ヶ月かかったことは娘には伝えていない。
 本当はこれだけではない。できる範囲で最大限努力をしたことを言い訳にして、子供たちにしわ寄せしてきたことは他にもいろいろある。痛いところを突かれた思いがした。
 女性の就労や昇進を後押しする制度はさらに充実すると思われる。これを追い風に女性の活躍の場が広がることを期待している。でも、仕事を優先しがちになった時は、自分より弱い者がいることを思い起こし、ワークスタイルを微調整することも必要である。

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