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コラム「この先生にきいてみよう」

日常における「遊び心」

金城 正治(大学院医学系研究科 教授)

 作業療法では、生活を「日常生活」、「仕事・学習」と「遊び」に捉えることもあります。そして、この3つのバランスのとり方や障がいがあった場合のやり方、動作方法、環境や道具の工夫、介助方法、やりたいことを支援していきます。特に遊びは子供の遊び、余暇、趣味などをさすことも多く、人の生活を豊かにします。
この「遊び」も大事ですが、ここでは分類した3つの生活行動の引き金になったり、関心をもったりする「遊び心」について考えていきましょう。「遊び心」とは、辞書によると遊びたがる気持ち、遊びたいと思う気持ち、ゆとりやしゃれっ気のある気持ちとあります。学校での試験、勉強、生活や部活などは大変ですが、その中に遊びを見つけられると少し楽しくなっていきます。気持ちや考えに余裕が生まれ、心と体の緊張も和らぎます。そして、これが発見、発想や創造力につながるかもしれません。面白くないと思うと、そこで学びはストップしてしまいます。学びも遊びの延長上にあると捉えるといいですね。
 私の担当する講義や実習では、試験や覚える事もたくさんありますが、学びは自分たちでつくるを基本に、チームで「遊び心」も生かした課題に取り組んでいます。例として学びやすい環境づくり、花壇づくり、仲間づくり、学生が自ら学習や活動をウェブページで発信するなどをしています(写真1)。また、教員と一緒に授業づくりや学生自身で講義や実習を担当することもあり、教員から一方的に学ぶのでなく一緒に学んでいきます。これはアクティブ・ラーニングとも呼ばれています。このような活動、課題、学習を通してさらに「遊び心」を育てていきます。他の学生の「遊び心」を理解したりすると自分の「遊ぶ心」も広がっていくでしょう。
 また、私は障がいのある方や支える方々の動きと環境について研究をしています。動きを捉えるには、自分の心や体に関心を持つことを説明していきます。我々は自分の体を知っているようで知らないことが多く、心にも遊びが少ないとストレスや病気になりやすいです。そして人体や関節にも余裕や遊びが大切です。これは物理的な遊びになりますが、「腰をまげて、床に手をつけるようにしてください」と言われた時に、多くの方は脊柱の腰からを曲げようとします。しかし脊柱の腰の骨は意外と曲がりません。そこで、股関節を意識して曲げることが本来の動きになります。股関節は見えませんが意識する(感じる)ことがポイントです。この動作がわかると腰痛予防にもつながります。余裕のない動きは体をこわします。このような物理的な遊びの意味にも目をむける「遊び心」があると、体も楽に動かせるでしょう。
 人の姿勢や動きは周りの環境と相互に影響しあっています。あなたが今座っている椅子は、あなたに合っていますか。そこにあるから使っているのでしょうか。椅子の高さ、座面、背もたれ、デザインはいかがですか。机との関係はどうなっていますか。前かがみになって字を書いていませんか。首や肩こりがありませんか。椅子があなたの座り方に影響を与えているかもしれません。そこから楽に座れないのか、椅子の上で姿勢が楽に動かせないか、もっと勉強がしやすくならないかなど考えるといいかもしれません。与えられたものをそのまま受け入れのでなく、自分の感覚や感性、「遊び心」を磨きましょう。そうすると工夫や発見が生まれます。これを工学的に分析測定していくと立派な研究につながります。
 障がいのある方のいすや車いすの研究開発、試作、製品化も行っていますが(写真2)。その人にあわせていくことを大切にしています。ここでも動きや大きさに物理的な遊びがないと窮屈になり、動きも制限されていきます。同時にデザインの遊びも重要になり、そこに使う方の個性や「遊び心」を見つけていくようにしました。
 「遊び心」は小さくてもかまいません。どうしての疑問、面白い、そうだったのか、小さい変化、関心をもつといいですね。日常の中に小さな発見を探してください。それを時々周りの人に話すのもいいかもしれません。大学はこの発見や遊び心をさらに広げていくところです。作業療法では「遊ぶ心」を大事にしていきます。
 「遊び心」は皆さんの人生や成長を楽しく豊かにしていきます。


当学科の学生ウェブページのトップ画像
https://akita-uni-ots2012.jimdo.com/より引用


開発・販売した椅子