ローモデルの紹介

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2016.10

池亀 直子

ゆっくり急げ

  • 池亀 直子(いけがめ なおこ)
  • 秋田公立美術大学
  • 美術教育センター 准教授
研究内容を教えてください

専門は教育哲学、教育思想史、芸術教育論です。研究テーマは大きく二つあって、一つ目は社会や教育制度において「子ども」がどのように考えられてきたかの歴史を辿る子ども観研究。二つ目は独創性と個性の概念史・思想史研究で、芸術の独創性とは何か、独創的才能は教育可能か、子どもの個性と芸術の関係といったことを考えています。

進路を決定したきっかけや今の研究をしようと思った
きっかけがありましたら教えてください

大学時代は体育会で運動ばかりしていました。そのことに悔いは全くないのですが、卒業前に学問でやり残したことが多かったと気づき、紆余曲折のうえ恩師に勧められて大学院を受験しました。進学先では常に研究者であることを求められました。走り続ける背中を見せてくれる先生・先輩との出会いがあり、切磋琢磨しあえる友人も多く得ました。夕方になると院生室や実験室に散っている仲間が集まってきて、出前を頼んだりラーメン屋さんに行ったり。ファミレスでの大激論もいい思い出です。ただし、性別や生活を気にせず研究に打ち込める環境がいかに恵まれていたか、そしてそのために先生方がどれほど力を尽くしてくださっていたかを実感したのは就職してからです。
そのような環境下で一度研究をやめようとしたことがあります。博士後期課程の頃、叔母のガンが再発し、母と交代で介護に通うことになって研究が中断されてしまったのです。当時は「介護は女の仕事」という通念が強くありました。周囲から取り残されて焦るばかりで、つい「もう全部やめたい」と口にしたら、同じ研究者である夫(西洋古典学専攻)に「では今すぐPCを叩き壊すがそれでもいいか」と言われました。積み上げたものがすべて無くなることを思い、「嫌だ」と答えた時に研究者として生きる覚悟を決めました。同じ頃夫が教えてくれたラテン語「FESTINA LENTE (ゆっくり急げ)」は、研究者としての座右の銘になりました(ちなみに文法も習いましたがこちらは初歩で挫折)。
当時はつらいばかりでしたが、叔母を看取り「死」と向き合った時間はやがて「生命」を考える論文に結実し、その論文が評価されて助手に採用されました。また社会から取り残される孤独と焦燥感を体験したことは、「子どもの孤立」を考え、子育て世代や介護従事者を理解し支える保育者・教員養成の授業に活かされています。

仕事と生活を両立するために実践している事、心がけている事はありますか

整理整頓が苦手なので、直前に慌てないよう物事をはじめから仕分けします。締切はトラブルを見越して早めに設定し、研究以外の事務仕事は決めた時間内で終わらせます。オフの間は散歩や友人と会うなどして気分をリセットします。そうやって稼いだ時間と精神的余裕を、じっと何もせず、ひとりで深く考えることに充てます。

研究者を目指す女性大学院生・学部生の皆さんへメッセージを一言お願いします

研究者には特別な才能など必要なく、自分自身と研究にどれだけ真剣に向き合えるかですべてが決まると思っています。もちろん性別は関係ありません。ただ現状、女性は出産、育児、介護などを理由として、研究と向き合うための時間や理解を得にくい状況にあることも事実です。それでも、自分さえ諦めなければ続けていくことができる。それが研究です。

●プロフィール

立教大学

お茶の水女子大学大学院、夫(事実婚)と同居開始

お茶の水女子大学助手

同COE研究員

蒲田保育専門学校専任講師

博士学位取得

秋田公立美術大学准教授

●マストアイテム(タブレット)

「ゆっくり急げ」と刻印しています。頭痛持ちなので、発生要因である低気圧と月経周期の予測アプリを使って研究スケジュールを組みます。

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