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コラム「この先生にきいてみよう」

第4回 数学はちょっと、という人へ

小林 真人(大学院工学資源学研究科 准教授)

 数学はちょっと、という人が多い。そのような人には、あわてずに感じること、つまり味わうことを勧めたい。

 学校時代を終えてしまえば数学の試験なんてないので、ひとの作った問題をパッパと解くことは、たいして重要ではない。それより、数学に登場するアイディアは人類の共通財産で、世の中のあちこちで使われる。見かけの複雑さに惑わされてはいけない。役立つものはおしなべて、分かってみれば驚くほど単純だ。だから、教科書の一節をまず読み、なぜこんな妙なこと考えるのか、どこに面白みがあるのか、ようするに何なのか、などと色々な疑問を頭に浮かべるのが正しい。しばらく考えたり想像を楽しんだのちに問題を解くのである。

 みなさんが、おそらく小さいころには素直に持っていた、数や形に対する感覚を閉ざしてしまうのは、恐ろしい。たとえば、専門家と称するひとが数値や式を持ち出したとたん、あっ、分かりません、お任せ、となって物事が進んでしまうのでは、真っ暗闇を暴走するに等しく、そんな社会には安心して暮らせやしない。こんなとき、なにか忘れてやしないか、この人の意見や判断がどれ位混ざっているのか、なにを大切に思って判断したのか、といった感覚が自然に働くひとが多ければ、少しは心強いだろう。

 さて、問題を解くとき。どんなに時間がかかっても、回りくどくても、自力で正しい答えにたどり着くこと。教科書の例題が最適だ。自力といったが、最初は解答を見ながらでも良い。肝心なことは、ひとつひとつのステップが正しいかどうか、責任を持つことである。

 どんなにまわりくどくても、こうしてあなたがたどり着いた正解は、未来永劫に、誰が見ようと絶対に正しい。えらい、すごい、と自分を褒める価値がある。こんな貴重な体験、紙と鉛筆だけでできる科目は他にない。