2014.12
大切な思春期-「性教育講座」を担当して
志賀 くに子
日本赤十字秋田看護大学
看護学部看護学科 准教授
1996年全国7.0、秋田県9.9、1998年全国9.1、秋田県12.2、2000年全国12.1、秋田県17.7。これは10代の人工妊娠中絶率(15-19歳の女性人口1,000対)を示す数字で、秋田県では全国平均より高い数値でした。この状況から秋田県教育庁・秋田県教育委員会では、秋田県内の全高等学校へ、性教育講座講師派遣事業を開始しました。また秋田県医師会でも、秋田県の若年出産・中絶数の多さや日本におけるHIV/AIDS増加の現状をふまえ、2003年、性教育プロジェクト委員会を立ち上げ性教育派遣講座への医師派遣の窓口になりました。
そして同時期、日本産婦人科学会秋田地方会と日本産婦人科医会秋田支部による、性教育指導マニュアル「すこやかな心と体の性の成長をめざして」(田中俊誠、村田純治監修、2004年)が発行されました。このマニュアルは、「月経と第二次性徴」、「妊娠と避妊」、「性感染症」、「セクシュアリティ」、「参考資料」の5章、いずれも基礎編、応用編と構成されていて、CD化したスライド集が付属されています。
また2002年には、「あきた健やか親子21」として県内10中学校で、2003年には中学校5校と小学校4校で性教育派遣講座が試験的に行われ、2004年から原則中学3年生を対象とする、中学校性教育派遣講座が開始されました。中学校・高校での性教育講座では、生命の大切さ、性感染症、男女交際、妊娠・出産・避妊、妊娠中絶などについて、学校ごとの実態に即した講演が行われています。これらの取り組みにより、秋田県における10代の人工妊娠中絶率は減少してきました(図参照)。
秋田県では、県事業として性教育講座を開催しています。私も秋田県性教育研究会会員として、そのような状況のなか、2003年(平成15年)から「性教育講座」を担当しています。秋田県性教育研究会は、1973年(昭和48年)に設立され、研究会活動の一つとして「性教育講座」を依頼され実施しています。
「性教育講座」の目的は、様々な性情報が氾濫するなかで性感染症や性に関する正しい知識を身に付け、社会的な風潮に流されることなく、正しい行動を選択できることとされています。生命の大切さ、生命を育む女性の心と身体の大切さ、自分を大切にし、他人にも思いやりをもつことを学習する、性の健康教育はきわめて大切だと考えます。思春期の健康は、生涯の健康、次世代の健康につながるものだからです。
中学校を対象とする性教育講座は年間数十校ありますが、私はそのうち秋田県性教育研究会会員として3~4校の中学生を対象に講座を担当しています。「思春期」「性」「性感染症」「男女交際」「妊娠」「人工妊娠中絶」「性被害」「生命」などをキーワードにして、おおよそ対象校の求める内容を準備します。
「性」は特別なものでもなく、常に身近にあるものであると説明しています。自分の心や身体を大切にすること、すなわち食事を摂る、質のよい睡眠をする、適度に運動をすることなどが「生きる」ことであり、「性」だと考えます。大切な思春期、多くのことを学校における学習、友人との関係を通じて学んで欲しいと願っています。一度の講座で生徒らが正しい知識を得たか否かの評価は困難ですが、正しい知識を得る大切さに気づくことができると思われます。
秋田県のように専門家と学校が連携することで、性教育はより充実するものと思われます。また医学的な知識だけではなく、現場の教師も自分や相手を尊重することや、自分の行動に責任をもつことなどを教えていくことが大切になると考えます。
今後も思春期の心とからだの発達を中心に説明しながら、自らの性に向きあう機会となるように心がけていきたいと思います。
秋田県教育庁 保健体育課作成
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ホームページ:平成24年2月24日第5回思春期における性と生
~秋田県と県医師会の性教育連携の成果~