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2019.02

育児休業を取得して(1)

樋渡 一之
樋渡 一之
秋田県総合食品研究センター
企画管理室 主任研究員

 私は11年程前、2人目の子どもが生まれた後8週間の育児休業を取得しました。本原稿は、育休取得後に秋田県庁内の庁内誌(現在は休刊)向けに書いた育休体験記を改稿したものです。育休取得後すぐの寄稿で、かなり浮かれている恥ずかしい文章ですが(汗)、その辺どうか御容赦ください。なお、当時男性の育休はかなり珍しく、秋田県庁の歴史の中でも私が2人目か3人目だったように記憶しています。

 写真は11年前、母子そろって無事に退院の日の写真です。
今の写真も載せようかと思いましたが、女性陣からNGが出そうなのでやめておきます(笑)

 一応、当時→の家族構成をご紹介します。
私・・秋田県総合食品研究センター職員(研究職)。32歳。専門は分子栄養学、食品機能学。
   →同職ですが企画職に移りました。予算の管理や研究周辺事務などを担当。43歳。
妻・・某動物園勤務後、専業主婦となり2度目の出産。(ないしょ)歳。
   →一時期請われて職場復帰も、再び専業主婦に戻る。(やっぱりないしょ)歳。
娘・・幼稚園入園前、3歳。育休明けの後、4月から幼稚園。
   →中2、割と優等生。怪我で1年近く医学部附属病院にお世話になってます。
息子・・・平成19年12月19日生まれ、今回の育休対象児。0歳。
   →小5、バスケ少年。頭の中身はほぼバスケ。愛読書はスラムダンク。

―――
 家族構成を見て、「あれ?」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。「奥さんが専業主婦なのに育休取れるの?」と。結論から言うと、期間限定ですが取ることができます。育児休業は通常、子供が生まれてから3年までの間母親か父親のいずれかが(もしくは交代で両方が)取ることができますが、子供が生まれた日から8週間は母親の在職の有無にかかわらず、父親も取得可能です。
 私が職員に配られる子育て関係のパンフレットを眺めていてこのことに気づいたのは、上の娘が1歳ぐらいの頃だったでしょうか。そのころから2人目の時は育休取るぞと計画を温めており、実行に移したというわけです。

1)取得した理由
 出産が帝王切開になることがあらかじめわかっていたからというのが表向きの理由です。1人目の時が帝王切開だったため、今回も帝王切開になることはかなり前の段階でわかっていました。帝王切開はおなかをぱっくり切るわけですから、出産後の育児は傷も痛みますしなかなか大変です。私自身は秋田市内出身で実家は近くにあったのですが、様々な事情からジジババ世代には頼れず、妻は県外出身ですから、1人目が生まれてからの育児はほぼ2人だけでやってきました。おそらく一番大変な時期だから、これはサポートしたいなぁとずっと考えていました。
 ただ、これは本当に表向きの理由で、実は単純に「家族と一緒にいたかったから」とも正直思っていました。上の娘もまもなく幼稚園に通い始めて昼間は家からいなくなります。私も仕事をしている以上、2か月間も堂々と家にいられることはもうないでしょう。生まれてきた子供も含めて、2か月間家族みんなでずっと一緒にいる最初で最後の機会だと思ったのです。そんな自分勝手な理由で仕事を休むなんて、という御批判もあるでしょうが、私にとって家族と一緒にいながら妻のサポートをするという育児休暇はとても魅力的でした。
 そんなこんなで出産予定日の4か月程前に上司と所属長に育休を取りたい旨をお伝えし、快く了解していただきました。

(現在筆者注:今読むとやっぱり身勝手ですね、職場の皆様に申し訳ない気持ちになります。でも当時の正直な気持ちです。)

2)休業中の業務
 私は研究機関の研究職です。研究職には予算や議会対応の業務はほとんどありません。大学の先生のように授業や学生の指導もありません。突発的な業務が少ないため、ある程度スケジュールを自分でコントロールできます。半年ぐらい前から育休を取ることを前提に業務をスケジューリングしていたこともあり、育休中に何かあっても在宅の書類書きか何回かのちょっとだけ出勤等で対応できるだろうと考えていました。
 研究センターの職員の皆様のお力添えもあり、実際になんとかなりました。事前にメールは自宅のアドレスに転送をかけ、私が対応する必要のある電話は連絡してもらい携帯から折り返しかけ直していました。自宅のパソコンで入札の仕様書を書いたり、報告書をまとめたり、実験データの集計・解析作業をしたりといったこともしておりました。あまりいいことではないのかもしれませんが(10年前のことですので時効ということでご勘弁ください)、結果的には週に合計1日ぐらい在宅勤務していたというのが実態かもしれません。
 本当は自宅から職員用ポータルサイトが使えれば一番良かったのですが、このIT社会でも何とかなりませんかね? やっぱりセキュリティの方が大事でしょうか。民間企業では社内ポータルに社外からアクセスできるようにしているところも多いみたいですが。

(現在筆者注:今この原稿を読んでいる方は、大学の教員の方が多いのでしょうか? 大学教員の方は授業と学生の指導があるという点で、育休が取りにくいかもしれません。ただ、女性教員の方は苦労されている中でも実際に産休/育休を取得されているわけで、男性教員の方も一度自分のこととして考えてもらいたいなあと思う次第です。仕事柄大学教員の方とは接する機会が多く、先生方はとても研究熱心で尊敬するのですが、もう少しだけライフワークバランスを考えてみてはいかがでしょうか。
 ちなみに、自治体男性職員はどうかというと、育休の前に予算と議会の関連業務が立ちはだかっているという状況で、10年前とあまり変わっていません。予算と議会は突発的に物事が発生しますし、書類の〆切までの期間がやたらと短く(17時に明日の朝までと言われても驚かない)、とにかく忙しいのです。多忙な予算議会関連課所には、子育て期の女性職員は今でもほとんど配置されていません。働き方改革がしきりに謳われていますが、そのあたりはまだまだです。
 なお、現在では秋田県庁でも専用パソコンを借りての在宅勤務が限定的ですが認められています。男性の育休も数値的にはわずかながら、少しずつ増えています。自治体も少しずつは前に進んでいるのです。)


(「育児休業を取得して(2)」へつづく)

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