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コラム「この先生にきいてみよう」

第9回 大学で初めて学ぶ外国語

長谷川章 先生(教育文化学部 教授)

 私は秋田大学でロシア語を教えています。この大学では他に、ドイツ語、フランス語、中国語、朝鮮語といった外国語も教養科目として開講されていますが、こうした英語以外の外国語を学ぶことができるのは大学の魅力の一つといえるでしょう。

 でも、こういう外国語の科目はなぜ開講されているのでしょうか。世界の共通語は英語なのだから、英語さえ勉強していれば問題ないと思う人もいるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。
この文章を読んでいるみなさんの大半は、日本に暮らして日本語を使っている日本人だと思います。この国で、日本語を知らない外国人と英語でコミュニケートすることはもちろん大切です。でも、日本の文化、例えばアニメや映画に関心をもって日本語を勉強している外国の人と知り合うとうれしくなりませんか。外国の人が自分たちの文化に深い興味を持って、一生懸命学ぼうとしているのを目の当たりにすると、自分たちの文化は世界的に見て価値があるのだという誇らしさと、学ぶ人への感謝の気持ちが生まれてくるものなのです。

 これはどこの国でも同じことです。私の専門は少し変わっていてロシアの映画史ですが、ロシア人にロシア語で懐かしのソ連映画の話題を振ると、うれしそうにいろいろな話をしてくれます。ロシアの映画は外国には影響力がないと思っている人が大半なので、日本への意外な影響を指摘すると逆に大きな関心を示してもくれます。
そしてこの際、大切なのは、ロシアのことを知るにはロシア語がいちばん有利という点です。例えば、ロシアのことを書いた日本語の文献は本当に限られています。英語によるロシア関係の文献はもっと数が増えますが、それでもロシア語で書かれた文献と比べるとはるかに少ないのが現状です(こうした情報の格差は外国語を学習して初めて気づくものです)。

 秋田大学では専門として外国文化を学べる課程があり、そこに入学した場合、最初に出会う外国語は将来の卒業研究へとつながることにもなります。でも、専門に関係がなくても、新しく外国語を勉強し始めることはその地域の文化を知ることになるはずなので、世界を見る目がきっと変わります。ぜひ大学では英語以外の外国語にもチャレンジしてみてください。