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コラム「この先生にきいてみよう」

50年後に石油は枯渇する?

藤井 光(国際資源学研究科 教授)

 電気自動車や燃料電池車の導入など、石油離れが徐々に進んでいると感じられる昨今ですが、依然として石油は我々の生活に欠かせない物質です。その用途は自動車・飛行機や発電所の燃料としてだけではなく、繊維やプラスチックなどの原料となりえるため、石油を天然ガス、石炭、原子力、水素などで代替することは困難です。一方で、地球の体積は一定であるため、利用できる量(可採埋蔵量)は有限であり、また石油は非常に長い年月をかけて生物の遺骸などから生成されたものですので、近年の消費量を考えると再生可能ではありません。

 石油の可採年数はBP社(英国石油)が毎年最新の統計を公表しており、2017年末では50.2年です。この数字を見ると2067年には地球上から石油はなくなり、車も飛行機も使えなくなるように感じますが、これは正しくありません。というのも、石油の可採年数は(可採埋蔵量÷年間消費量)で計算されますが、この式における可採埋蔵量は「すでに存在が確認されていて、技術的かつ経済的に生産可能な量」なのです。つまり、可採埋蔵量は地下の探査により石油が新たに見つかれば増加しますので、一定ではありません。また、存在が分かっている石油でも、極地や大深海底などにある場合、石油の粘性が高く流動性が低い場合、石油を貯留する岩石が石油を流しにくい性質の場合などでは生産するコストがかかりすぎて、可採埋蔵量には入りませんが、これらは石油生産技術の進歩により可採埋蔵量に再定義されることもあります。さらに、石油価格が高値で安定すると、生産コストが高い石油でも採算がとりやすくなるため可採埋蔵量に含まれるようになります。以上のことより、石油の可採年数は消費とともに単調に減少するものではなく、様々な要素に影響されて増減する性質を持つということがわかります。

 実際に、同じBP統計によりますと、1980年の可採年数は29.7年であり、上記の知識なしにこの数字を見ると石油は今から10年前にすでに無くなっていたことになりますが、今でもわれわれの生活には石油があふれており、枯渇の気配は全く感じられません。しかし、安心はできません。ぜひ知っておいていただきたいことは、これまでに生産された石油は比較的生産コストの安いものであり、今後新規に発見される石油は条件が悪くコストが高い石油が中心となるということです。すなわち、石油の完全な枯渇は今後数百年は起きないと予想されますが、石油の値段は上下しながらも、徐々に上昇することは間違いありません。これに伴ってガソリンや化学製品など石油を材料とするすべての商品の値段は上がり、石油を燃料とする発電は困難となるでしょう。

 そこで、われわれに課せられた重要な課題は石油を含む化石燃料に依存する社会構造からの脱却です。石油はこれまでに述べたように原材料として多様な製品を作ることのできるきわめて優れた物質ですので、発電や暖房のエネルギー源として使うことはたいへんもったいないことです。発電には水力・地熱・風力・太陽光などの再生可能エネルギーや(安全性の大幅な改善を前提として)原子力を最大限に利用することにより、化石燃料の使用を大幅に削減することができますし、再生可能エネルギーの普及拡大は地球温暖化対策に大きく貢献します。また、暖房には太陽光・地中熱・バイオマスなどを用いることにより、石油の燃料としての消費量はさらに削減できますので、これらを実現できれば石油の可採年数は延長でき、生活レベルが長く維持できます。もちろん、化石燃料に依存する社会構造からの脱却には大きな投資と技術開発が必要ですが、人類が長く繁栄するためには非常に重要な変革です。これから大学を目指す皆さんにも再生可能エネルギーに関心を持ち、普及に貢献いただくことを期待しています。


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