生命の“感じる力”を探る─イオンチャネルと統合生理学の挑戦
イオンチャネルから読み解く生命のダイナミクス

私たち秋田大学 器官・統合生理学講座では、「生命における“感じる力”と“応答する力”」──特に細胞膜の“イオンチャネル”に焦点を当て、生体が刺激をどのように受け取り応答するのかを分子・細胞・組織・個体レベルで探究し、医療・創薬、地域医療、予防医療への応用を目指しています。
私がこの道を選んだ理由は三つあります。第一に「生き物はなぜ環境変化に適応できるのか」という疑問で、大学院で細胞容積調節の研究に出会い、細胞の大きさを伴う変化が生命活動の根幹であることに魅せられました。
第二に、パッチクランプ法で単一イオンチャネル電流を初めて記録したときの感動です。極めて小さな電流が規則正しく開閉する“生命のリズム”を美しい波形として捉えた瞬間、「生命の本質はここにある」と強く感じました。
第三に、子どもの頃から培ってきた観察眼と、困難な問題に向き合い続けたいという姿勢です。この三つの経験が、研究者としての現在の私を形づくっています。
東洋医学と分子生理学が交差する新しい研究領域

当講座では漢方薬の知見も取り入れつつ、生理学・薬理学を融合した研究を展開しています。
近年の成果として、防已黄耆湯による腎細胞のクロライド輸送促進のむくみ改善機構の解明、機械刺激感受性チャネルPiezo2を介したシュワン細胞の栄養因子放出機構の発見などがあり、医療応用につながる成果として国内外から注目されています。
これらの研究成果は、学部生・大学院生が積極的に研究に参加し、研究室全体の活発な議論と協働によって生み出されているもので、若手研究者の受賞が続くなど、研究環境の充実と成長の好循環が築かれています。
生命の精巧な秩序を読み解き、医療へつなぐ統合生理学
イオンチャンネル研究と漢方薬エビデンスから拓く、地域医療への新しい価値
私たちの講座が目指すのは、社会還元だけではなく、生命現象の背後に潜む「自然のルール」を世界で初めて見出す学術的挑戦です。生命活動の背後にある精巧なシグナルの秩序が明らかになる瞬間は何にも代え難く、最先端の基礎研究の積み重ねが未来の医療や創薬の種となります。
例えば「むくみ」「心不全」「腸の不調」「皮膚の健康」などに対し、イオンチャネルや漢方薬の作用を解明することで、地域医療に根ざした新たな治療・予防の可能性を拓いています。
これからも「生命のしくみ」を丁寧に紐解き、人の健康へとつなげる研究を通じて、“秋田発”の医科学研究を国内外に発信し、未来の医学を担う若い世代とともに新たな問いに挑み続けていきます。
(取材:広報課)
※掲載内容は先生ご本人による執筆です

